自分の人生の主役は自分なんだよ。
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あるスペイン人の労働意識
 
 「いくら新人だからといっていつもいつも時間ぎりぎりまで働かすことはないだろう!」


運転手の詰所の横につながっている事務所に戻るなり、運転手の手配をしていて夜の9時から仕事を始める親方・ルケが私が勤務する時間帯の責任者で同僚の若いハヴィを怒鳴りつけている、というかスペイン人は通常おおきな声なので、どなっているように聞こえる。

 新人というのは私のことだ。知り合いのハイヤー会社の社長から、テレビ局の仕事を24時間体制でサポートすることになった、人手が足りないので手伝ってもらえないか、という打診があった。私は日頃は日本人のための観光ガイドやドライバーズガイドの仕事を中心にしている。時間があるときはお手伝いしましょう、と答えておいた。

 私のテレビ局での仕事は取材陣のための運転手だ。15時から23時までの1日8時間拘束。日本人相手の観光とは違い、日頃は入れもしないところに入れるので、目先が変わっておもしろい。先日もマドリッド郊外にある軍事基地にいってきた。マドリッド・バラッハス国際空港横駐車場爆破テロで亡くなったエクアドル人を軍用機を使って国費でエクアドルへ償還するところをニュース報道するテレビ局のクルーとはいった。興味があるので私も付いていっていいかなと、ディレクターに打診すると一緒にきなよ、と気軽な返事。兵士に誘導されて駐車した車を置き去りにしてカメラマンのそばにぴったりとひっつく。成り行きの一部始終を見ることができた。

 「おれの知るかぎり4回は時間ぎりぎりまではたらいている。ほかの運転手は終了30分前には退出している手前、バランスが取れないだろ。どうしていつもいつも同じ運転手だけが時間ぎりぎりなんだ!」とハヴィが詰問されている。ハヴィは何かいい訳をいっているが、ルケおじさんは、いきり立って聞く耳をもたない。

 今日は帰っていいよ、とやさしくルケおじさんは私にはなしかける。お互いに笑みがこぼれる。ルケおじさんの笑みはいいたいことは言ったという満足感からくるのだろうか。夜も遅いから早く家に帰って、家族サービスしてあげなよ、と私に言っているようにも取れた。時計をみると夜の10時過ぎだ。私の仕事が終わるまで1時間ほどまだ、ある。残業などもってのほか、業務に支障がないかぎり、少しでも早く労働者を家庭に帰してやろうという優しい気持ちが親方・ルケには満ち満ちている。
 
 唐突だが次のことを参考までに記しておこう。統計によると昨年のスペイン経済成長率は前年比3.8%増を記録している。

2007年3月29日 喜多武司

 
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